来 歴


痩せた葡萄の蔓


頼りなげに揺れている葡萄の蔓
何気ない植物のいとなみが
なぜこんなにもなつかしいのか

風のまにまに揺れ動く葡萄の蔓
母なる大地を発し
もつれよじれながら
天の高みをめざしている
もうそこでいいなどと言わず
枯れるまでのぼりつめて行く
大地に捉えられながら
自分の存在の形だけ
くっきりとのびきってしまう
秋の風に吹き倒され
また天に向かって立ち上がる
一本の葡萄の蔓
さて私の足もとにも
網の目のようにくまなく
はりめぐらされている大地
どこへもこぼれようがない
無数の木や草が
規矩正しく息づいている
その暗い土壌に眠りこける
私も安楽な種子だった
今私が願うのは
葡萄の蔓をなぞって生きることだ
疲れた鳥を休ませる枝も持たず
支えを求めてはおろおろ歩き
立ち止まるたびに
これでいいのかととまどい
酸っぱい塊を
どうにか結実させるしかない
痩せた野葡萄の蔓であっても

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